FLOW 製造の流れ

巻き線工程におけるワニス処理(絶縁処理)の基礎知識

モーターの製造工程の中で、ワニス処理は、その性能と寿命を大きく左右する重要な工程です。ワニス処理については、いくつか方法があり、モーターの用途、サイズ、要求される性能、生産量、コストなど、様々な要因を考慮して適切な方法を選択する必要があります。

そこで今回は、巻き線工程で行われるワニス処理の方法とそれぞれの特徴をご紹介いたします。

浸漬法

浸漬法はワニス処理で最も用いられている方法で、 ステーター全体をワニスが満たされた槽に浸漬する方法です。浸漬法は下記の工程で行われます。

浸漬法の工程

予熱

ステーターを一定温度に予熱し、コイル内部の水分を除去し、ワニスの浸透性を高めます。

②浸漬

加熱されたステーターをワニス槽にゆっくりと浸漬します。ワニスの粘度や浸漬時間は、モーターの種類やコイルの状態によって調整されます。ワニスがコイルの細部まで浸透するように、時間をかけて浸漬します。

液切り(ドレン)

浸漬後、ステーターを引き上げ、余分なワニスを滴下させます。

④硬化(焼き付け)

硬化炉に入れ、ワニスを加熱して硬化させます。ワニスの種類によって硬化温度と時間は異なります。

浸漬法の特徴

メリット

設備が比較的簡素で、コストを抑えやすく、また複雑な形状のステーターにも適用しやすいのが特徴です。

デメリット

コイル内部の空気(ボイド)が完全に抜けきらない場合があり、含浸が不十分になる可能性があります。ワニスの使用量が多く、廃液処理が必要になる場合があり、また乾燥に時間がかかることがあります。

その他、ワニスの種類が複数あり、必要に応じて槽の切り替えが必要になるため、手間がかかることが挙げられます。

滴下法

滴下法は、自動化や効率化の観点から近年普及している方法です。予熱したステーターを回転させながら、コイルの適切な位置にワニスを滴下し、毛細管現象と重力によってワニスを浸透させる方法です。浸漬法は下記の工程で行われます。

滴下法の工程

①予熱

ステーターを予熱します。滴下するワニスの粘度を最適化し、浸透を促進するためです。

②滴下

予熱されたステーターを回転させながら、ノズルからワニスをコイルの巻線部に連続的または断続的に滴下します。滴下されたワニスは、コイルの熱により粘度が低下し、より奥深くまで浸透します。

③ゲル化・硬化

滴下後、ステーターの回転を続けながらワニスをゲル化させ、その後加熱炉で完全に硬化させます。

滴下法の特徴

メリット

ワニスの使用量が少なく、無駄が少ないのが特徴で、コイルの内部に均一にワニスを浸透させやすい方法です。また、短時間で処理が完了し、自動化しやすいのも特徴です。

デメリット

設備投資が比較的高く、滴下する位置や速度、温度管理が重要で、熟練が必要な場合があります。また、ステーターの形状によっては適用が難しい場合があるので注意が必要です。

真空加圧含浸法

真空加圧含浸法は、特に高電圧モーターや信頼性が要求されるモーターで採用される、最も高性能な含浸方法です。真空と圧力を利用して、コイル内部の空気を徹底的に除去し、ワニスを隅々まで浸透させます。

真空加圧含浸法の工程

①セット

ステーターをVPI装置(密閉されたタンク)内にセットします。

②真空引き

タンク内を真空状態にすることで、コイル内部や絶縁材料の微細な隙間に存在する空気や水分を完全に除去します。

③ワニス注入

真空状態を保ったまま、ワニスをタンク内に注入し、ステーターをワニスに完全に浸漬させます。

④加圧

タンク内に加圧(通常は数気圧)することで、ワニスを強制的にコイル内部の微細な隙間に押し込み、より深く、均一に浸透させます。

⑤液抜き

加圧後、ワニスを抜き取り、タンクからステーターを取り出します。

⑥硬化(焼き付け)

硬化炉に入れ、ワニスを加熱して硬化させます。

真空加圧含浸法の特徴

メリット

コイル内部のボイドがほとんどなくなり、高い絶縁性と機械的強度を実現することができます。その他、耐湿性、耐薬品性、耐熱性を付加することが可能です。

デメリット

設備が大掛かりになるため、導入コストが非常に高いというデメリットがあります。

また、他の方法と比較して処理時間が長くなります。

その他のワニス処理方法

上記3つの主要な方法の他に、特定の用途や効率化のために以下のような方法が組み合わされたり、独自に開発されたりすることもあります。

シャワー(フラッド)法

滴下法に近いですが、より多くのワニスを上部からシャワーのようにかけ流すことで、浸透を促進します。

スプレー法

ステーターの表面にワニスを吹き付ける方法で、主に表面保護や部分的な補強に用いられます。

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いかがでしょうか。今回は、モーター製造におけるワニス処理についてお伝えいたしました。

逢鹿電工では、モーター巻き線・ステータ巻き線の製造やモーター製造・組立を一貫して対応しています。お客様のニーズに合わせて、モーターの製造を行い、品質を担保した製品を納入しています。モーター製造に関することなら、お気軽にご相談ください。

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